2006年11月 7日号 - 新刊紹介・新刊を読む

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『蘇るコウノトリ』


 秋篠宮妃紀子さまの悠仁さま出産、出生率の低下など、出産に関するニュースは絶えない。「出産」といえば、コウノトリは「赤ちゃんを運ぶ鳥」として長く親しまれてきたが、日本で繁殖していたコウノトリは農薬による環境汚染などで86年に絶滅した。本書は、当時コウノトリの生息地だった兵庫県但馬地方の人々への聞き取り調査を基に、かつて存在した、人間とコウノトリの共生の実態について分析している。
 まず、本書はコウノトリについて異なる二つの言説が混在していると指摘する。戦前から、コウノトリは農民にとって稲を踏み荒らす害鳥「ツル」だった。一方、戦後になると、メディアや学校教育の影響を受けて「保護鳥」としての認識が広まった。コウノトリについて異なる価値観を持つ人々が対話し、知識を共有した上で、コウノトリとの共生を模索すべきだと著者は説く。
 現在但馬地方では、飼育下で繁殖させたコウノトリを再び野生に戻す計画が進行している。本書は、この計画にも言及しているが、但馬地方の人々とコウノトリの共生のための具体的な指針まで踏み込めなかったのが残念だ。