「古典日本語」と聞けば、『源氏物語』『枕草子』などといった、和語で書かれた古文をイメージする人が多いのではないだろうか。もちろん、中学校・高校の「古典」の教科書には漢文・漢詩も載せられているけれども、比重としてかな文字による文学が中心となっているからかもしれない。
しかし、一方で日本の古典を形成する存在としての漢字・漢文を決して見逃すわけにはいかない。本書では、東京大学教養学部国文・漢文学部会に所属する9名(神野志隆光・品田悦一・三角洋一・松岡心平・野村剛史・黒住真・ロバート・キャンベル・斎藤希史・小森陽一)が、近代以前における読み書きの世界のさらなる奥行きに分け入っていく。
漢字をもたなかった日本列島が、漢字を受容し、やがて漢字の読み書きが、「教養」として生活に必要な生活の基盤となり、気が付かないところで現在にも密接につながっていることをあらためて知ることができる。
さらに言えば、近代国家はいくつもの現在の「常識」を作り出したといわれるが、「古文」も近代の制度による産物と気付かせ、豊かな古典の世界のいざないとなる一冊だ。
発掘史料にはじまり、『万葉集』『古事記』、説話に抄物、世阿弥、頼山陽、そして江戸の書生から夏目漱石など、連綿と続く話題に惹きつけられ、「新たな発見」にいたることだろう。<寄稿=東京大学出版会>
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