著者は外務省に所属する現役外交官。交錯する現在の諸国際問題の最前線に当事者としてかかわり、判断を下すという、実務家ならではの新たな視点を提供してくれる。また本書は、前期教養課程で行われた、著者による授業の講義録を基につづられているのが特徴だ。
全体は三部構成。第一部は、米国・中国・北朝鮮各国と日本との関係という外交上の課題に焦点を当てた。第二部では、国連における日本の働きや世界情勢を探り、包括的な視点から安全保障問題を論じる。そして第三部では、国益重視では解決しきれない、疫病や環境問題、難民問題等における、日本の果たすべき役割を議論する。
現在の国際問題に対処するためには、自国の国益を第一目的とする一時的な解決では不十分。著者は、それぞれの問題は有機的に絡み合っており、国境を越えて総合的な解決を目指す姿勢が求められていると主張する。このため、各論点については詳しい解説書が多く存在する中、本書は全体を見渡してまとめる形式がとられた。この視点のもとで、例えば、日本が安保理の常任理事国となることの意義と、途上諸国のレスポンスとの相関などを論じている。
昨今、日本の外交政策が非難される場面も多々ある。しかし、現在の外交政策には、粘り強い議論と包括的な方法を模索し続けることが必要であり、国民にも、長期的な視野と包容力が求められていると著者は提案する。そのための重要なメディアとしての役割もこの本が担っていると言えるだろう。
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