2007年8月 7日号 - 新刊紹介・新刊を読む

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『満州事変から日中戦争へ シリーズ日本近現代史⑤』


 7月7日で、日中戦争の発端となった盧溝橋事件から70年がたった。それに先立って出版された本書は、満州事変の発生から日中戦争の開始に至るまでの、日本の政府閣僚・官僚・陸軍、関東軍、中国の実力者、西洋列強の動きを追う。
 日本近現代史を描き直すシリーズの5冊目。同シリーズは「幕府の外交は最善を尽くした」(井上勝生著『幕末・維新 同シリーズ①』)などと定説を揺さぶってきた。本書も、日本人は本当に日中戦争を「戦争」と思っていたのか、との問いを立て、常識に挑む。
 日中両国は、日中戦争へ向かう中で相手が国際不法行為を行っていると主張。戦争中も眼前の戦闘が国際法に抵触しない正当な行為だと言い張っていた。その主張と現実とのずれが、両国内の権力闘争や西洋列強の思惑によって広げられ、戦闘は泥沼に陥った。
 著者は人文社会系研究科教授で、専門は日本近代史。研究書を中心に発表しており、一般向けの新書は本書が3冊目となる。本書でも史料を集めて答えを導くという学問的に厳密なスタイルを貫く。
 05年に中国で、日本の歴史教科書を一因とする反日デモがあったが、この2年で日中の歴史共同研究が進んだ。東大では、中国人研究者と共著を出した三谷博(総合文化研究科教授)や、日中歴史共同研究の日本側座長に就いた北岡伸一(法学政治学研究科教授)が活躍している。
 しかし、本書は現在の政治的状況に一切言及せず、事実の記述に徹している。日中の歴史観の違いにとらわれず、事実を追う姿勢から、学ぶ部分は大きい。