ルネサンス期から近代にかけての自然科学の発展により、私たちの社会は自然主義中心になった。具体的には、身近な事物からこれまで哲学で扱ってきた心や道徳までも自然現象の一部としてとらえ、自然科学的な方法で解明できるものだとしてきた。これにより、現代においては哲学と自然科学の境界があいまいになりつつある。では、現在の哲学は何を対象とすべきだろうか。
本書が提示する現在の哲学の課題は、自然主義に抗し、自然主義ではとらえきれない人間の内在的な部分に迫ることだ。これまでもこうした反自然主義的な営みは試されてきたが、カントの理性主義のみが反自然主義だという見方がされてきた。本書では、こうした見方を打ち崩し、反自然主義の新たな可能性に迫る戦略を示す。
この戦略で中心となるのは、「理由の空間」と呼ばれる概念だ。私たちの社会は、知識や行為をめぐって他者と批判的な対話を交わす「理由の空間」によって構成されているとする。この空間は、他者とのコンテクストの上に成立しているため、自然科学によってとらえられる空間とは異なる独自の空間であり、自然主義的に解体することが不可能である。故に、私たちの社会も自然主義によって解明できないと指摘する。
本書はそれぞれ別々の機会に執筆された9編の論考からなる。第1章から次第に内容が高度になっていくように構成されているため、哲学の初心者でも現代哲学の新たな潮流に触れることができる。
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