2008年5月27日号 - 新刊紹介・新刊を読む

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新刊を読む『医学生とその時代』 医学部から見る東大の変遷


 1858年、長崎でシーボルトに師事した伊藤玄朴らは、現在の医学部・同付属病院の起源である江戸お玉ケ池種痘所を開設した。2年後に幕府管轄となった後の1877年、東京大学医学部となった。この唯一の官立医学校は、日本での近代医学普及の全責任を負っていたとも言える。
 本書は医学部の卒業アルバムから写真を収めたもので、医学部・同附属病院創立150周年に当たって日本の近代医学普及を語るものだ。アルバム制作は1902年に始まり、戦時中も続けられた。日本が近代国家に近づいた日露戦争後には各人に顕微鏡がそろい、スポーツ大会を開催する場所があった。政府の下で教育環境が充実していことに驚かされる。献体数の不足から、死後の献体を約束する教員もおり、生前の教員とその骨格標本が並ぶ写真からは近代医学普及に尽くした医学者たちがしのばれる。
 医学部は近代の歴史と密接にかかわってきた。附属病院は戊辰戦争で傷ついた新政府軍の治療のため、横浜に軍陣病院が設けられたのがきっかけだ。関東大震災での損失、戦時中の一部学生の軍隊召集、安保闘争時のデモ・抗議集会なども影響に含まれる。東大闘争が、医学部での学生処分に端を発し、全学そして日本全国に波及したことは言うまでもない。本書は、いわば医学生から見た近代日本の記録書であろう。