いまさら「革命」という感もあるが、本書はフランスのジャーナリストにより、07年11月に出版されたものの訳書になる。
本書はまず、閲覧者が自由に編集できるウェブ百科事典・ウィキペディアを学生がいかに不適切に使い回しているかを示し、「百科事典ブリタニカと同程度正確」とするネイチャー誌の声明を丹念に批判。ウィキペディアの運営体制、悪意あるページ改変、百科事典業界の調査、ディドロの『百科全書』との比較へと話を進める。筆者は「ウィキペディアは既に存在しており全否定できない」という独自の立場から、その不完全性を逆手にとった教育への利用を主張。ウィキペディアへの学生の投稿を評価するパリ第8大学の講義などを例に挙げる。メディアリテラシー教育の一環だ。
著者は一見中立的な立場を装いながら、基本的には批判的立場を取る。表現も装飾的なものが多い上に、「知識の習得には時間と頭脳が必要」とする「メディオロジー学者」の主張は聞き書きに留まっている。つまり、批判自体が知識ではなく断片的な「情報」に留まっており、自己批判の精神には乏しい。
だからこそ本書で追加された、木村忠正准教授(総合文化研究科)による学問的考察の意義は大きい。社会的合意・意思決定の場として見る「ガバナンス原理」や、マスメディアの影響を暗示する「間メディア性」など、本編の豊富な実例と合わせて読むとなお興味深い考察が多い。解説が、知識の威力を身をもって示した形だ。