2008年9月 2日号 - 新刊紹介・新刊を読む

記事

新刊を読む『自民党――政権党の38年』


 副題の「38年」は自由民主党の結成から自民党単独政権が断絶する93年までの間を指す。本書は法学政治学研究科教授である著者が95年に出版した単行本を文庫化したもの。
 戦後の政党政治は、普通選挙と同時に導入された中選挙区制によって、政治家に対する有権者の数が多くなった。これに伴い、選挙活動の際に政治資金が重要となった。高度経済成長とともに産業構造が変化し、農村を基盤にした自民党の集票システムは変化を迫られる。以降の章では、自民党が政治家の個人後援会と派閥から成る新たなシステムを構築し、それらを中心に政治を動かす様子について描く。
 戦後政治を長期的に俯瞰(ふかん)した多数の書籍の中で、政治家の思考回路の分析の明快さが本書の特徴だ。著者の深い洞察は、岸信介・元首相が当時誰も考えなかった安保改定に踏み切った経緯に良く現れている。岸は、早くから独立回復と対米協調の両立を目指していた。著者はこの岸のビジョンや行動の大胆さが、後の学生運動にまで発展する混乱の原因だと分析。岸の辞職を機に派閥の均衡が政治の中心となる「六十年体制」が成立したと述べる。
 00年の省庁再編など政治主導が進んだことや、小泉純一郎元首相が大衆に訴える政治手法を取ったことで現在、政治資金や派閥を中心とした自民党の構造は解体されつつある。本書から自民党の原点を振り返ることは、今後の政治の行方を見定める手掛かりとなるだろう。