2009年8月 4日号 - 新刊紹介・新刊を読む

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新刊を読む「マルクス・アウレリウス『自省録』――精神の城塞」



 「パックス・ロマーナ(ローマの平和)」と呼ばれ繁栄を極めた2世紀のローマ帝国。中東のパルティア王国との戦争下で、一冊の哲学書が生まれた。五賢帝の最後、マルクス・アウレリウス帝の『自省録』だ。心の安寧を追求する哲学へのあこがれと、国の存亡を第一に考えなければいけない皇帝の地位とのギャップの中で、人間はいかに生きるべきかを自問し続けた。本書では、『自省録』をめぐるマルクス研究の歴史が語られる。
 哲学史の上では、マルクスはストア派に分類される。この派は、英語で「ストイック」といわれ、自己に苦痛を与えることで精神的な向上を図ろうとする禁欲主義のイメージが付いて回った。だが、実際『自省録』の文章を読むと、宗教的な妄信はなく、日々の生活を起点にして心の平静を求めようとする実践の連続がうかがえる。
 とはいっても、『自省録』にはいまだに多くの謎が残る。無秩序に教訓じみた文章が並び、同じような内容が繰り返し書かれる。備忘録か日記のような印象を受けるが、読者に呼びかけているとも取れる表現もある。これらに対して歴史的にさまざまな解釈がなされてきたが、いまだに決着はついていない。
 本書では、なぜ『自省録』が書かれたのか、という問いに踏み込む。ここで筆者は、書くという行為自体が、自己の不断な精神の訓育だったのではないかと提唱している。マルクスにとって、書きつづること自体が実践であったと分析する。
 『自省録』には、「哲学は頭の中で考えるもの」という、われわれの固定化したイメージを覆す力がある。