2009年9月 1日号 - 新刊紹介・新刊を読む

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新刊を読む『鉄学137億年の宇宙誌』 鉄誕生から新素材開発まで


 「鉄の惑星」――人類初の宇宙飛行をしたガガーリンの「水の惑星」という言葉をもじって、本書では地球をこう呼ぶ。大量の鉄が地球の中心部に存在することで、地球に磁場が発生し、宇宙空間を飛び交う放射線から生物が守られている。鉄は地球が現在の地球たるゆえんである。


 本書では、現在から137億年前まで時間軸をさかのぼりながら、人間にとって、地球にとって、鉄が担ってきた役割を解説していく。鉄系超伝導物質を利用した新素材開発から、コークス製鉄法の開発、鉄器の使用へとさかのぼり、鉄が地球や太陽系の誕生にかかわったところまで説明される。


 特に興味深いのは、鉄という元素がそもそもどうやって誕生したのかについての説明だ。鉄は炭素やマグネシウムといった他の元素と比べて重く、その分原子核の構造も複雑だ。それを作り出したのが、恒星の中心部で起こる核融合。恒星自身が持つ重力による収縮で数億~数十億度の高温になった中心部では、既存の元素の原子核どうしが衝突し、新しい元素を生み出す。この過程で鉄も誕生した。自然が生み出した「錬金術」といえる。


 本書のタイトルと似た特別展が総合研究博物館でも行われている。「鉄―137億年の宇宙誌」だ(10月31日まで)。特別展では、最新の研究で作り出された鉄系超電導物質や世界最大級の鉄鉱石コレクションが展示されている。本書と合わせて特別展を見れば、まるで自分がタイムスリップしたかのような感覚が味わえる。