――ご自身はどんな東大生でいらっしゃったのでしょうか
 東大があまり好きではありませんでした。前期課程のドイツ語の授業で出席を取っているのを見て、幼稚園かよと思ってしまいました(笑)。大学は学びたいから行くところで、出席を強制されるようなやり方に違和感を覚えました。ノートを見せてくれと頼んでも嫌がる友人も多く、器の小さい人間が多いなと思っていましたし。そのせいか自然と大学には行かなくなりました。大した勉強もせず、無駄な時間を過ごしました。もっと勉強しておけばよかったと思います。
 後期課程に入ってからは、おもしろいと思った先生の授業しかとりませんでした。そのせいで2年留年してしまいましたが、自分の興味のある授業しかとっていなかったので成績は飛び切りよかったです。

――どうして国家公務員Ⅰ種を受験しようとお思いになったのでしょうか
 4年生の時、司法試験を受験しようと思ったら、申し込みの締め切りが過ぎていて受験し損ねました(笑)。結局2年留年して、民間就職は厳しいから国家公務員試験を受けたらという友人の勧めで試験を受けたら通ってしまいました。もともと公務員は堅いイメージばかりであまり好きではなかったのですが。
 国家公務員Ⅰ種合格後も、官庁周りのスタートは遅かったです。期限ぎりぎりで始め、通産省(当時)と大蔵省(当時)から内定をもらいましたが、通産省に行くことにしました。

――なぜ通産省をお選びになったのでしょうか
 通産省が一番自分に合っていたと感じたからです。通産省では唯一、面接で成績の話がなかったのです。自分の人柄を見てくれているようでしたし、何より通産省の人たちは働いていて楽しそうに見えました。
 国家公務員Ⅰ種に落ちた時のために民間の就職活動もして、大企業からもいくつか内定をもらったのですが、どこに行っても大学の成績を見ただけで即内定でした。自分の人柄でなくて、結局点数かよと思い、断りました。大蔵省(当時)を蹴ったのは雰囲気が全く自分に合わなかったからです。ただ威張っているだけで全く面白みがない。すごいなと思う人がいなかった。親には大蔵省を進められましたが、自分の希望を優先しました。

――現行制度の改革や、問題の告発には大変な勇気と体力が必要だと思いますが、いかにしてその能力に恵まれたとお考えですか
 学生時代から、「変わっている」、「面白い」といわれるのがほめ言葉だと思っていました。出世ということは考えたことがなくて、信念を貫くのが第一というか。最後に官僚としての仕事がなくなり、「干されていた」状態も、大して苦痛ではありませんでした。信念を通して権力と勝負するスリルと充実感が勝っていましたね。大変だけど面白かった。

――古賀さんにとっての官僚という仕事のやりがいはどんなものですか
 官僚にとっては、日本は今「面白い時代」を迎えています。現在日本社会は財政問題、福島原発など難問山積です。
 財政状況の厳しさは、ギリシャのような破綻も視野に入れ、破綻と返済継続のどちらが日本にとって得か、という議論がアメリカなどで始まっているくらいです。名目GDPが減少し続ける日本経済のような例は先進国ではありません。経済が縮小しているのに増税してもますます経済が縮小するだけでとても財政再建はできません。消費増税で財政再建をやるには30%~35%にする必要があるというのが最近の研究結果です。増税よりも成長のための改革の方がはるかに重要ですが、民主党も自民党もそれをやる勇気がないのです。
 福島原発の問題も、省庁の壁を越え官僚全体が知恵を出さねばならない深刻な問題です。
 難局にある日本だからこそ、国を改善する独創的な「処方箋」を政治家に提示し、ともに日本を救っていく官僚という仕事はやりがいがあります。

――世間的に官僚に対し逆風が吹いているように感じます。現在、どんな人が官僚になるべきとお考えでしょうか
 官僚の仕事は極めて広範ですし、とても大変です。日本が直面している答えのない難問を解決して、国を良くしてやろうという気概を持った人に官僚になってほしいです。官僚は批判されていますが、同じ公務員でも警察官や消防士は人々に感謝されています。それは国民から見て、彼らは自分より一般市民のことを考えて行動しているからです。そういった公僕の精神を持ち、自分のためではなく、国民のために働くことを誇りに感じられる人に官僚になってほしいです。

――ご自身の著書で、「官僚は東大出身者を1/3まで制限すべき」とおっしゃっていましたが、どうしてでしょうか
 バックグラウンド異なる人を集めた組織のほうがいい、というのが私の持論です。私が携わった産業再生機構という組織では、出身、経歴の異なる人を集めた結果、様々な意見が出て考えが深化され、予期せぬほどの成果を生みました。
 東大生は挫折を知らない、バックグラウンドの似た人間が多いです。様々な背景の人と意見を交わさないと、自分たちの考えがスタンダードだと錯覚し、反対意見を聞き入れなくなってしまいます。また、構成員の意見が同質だと細かい点しか修正できず、抜本的な見直しが困難となります。人の能力は大学卒業後、社会で揉まれ大きく向上するものです。一流大学など出なくても就職してからさまざまな経験を積み、大変な局面を乗り越えた経験を持つ人は並みの東大出身者よりも遥かに優秀です。点数による基準だけでなく、さまざまな経歴の人を組織に入れるべきです。

――現在、官僚制度批判の急先鋒としてメディアによくご出演なさっていますが、いかがお考えでしょうか
 私は無目的にテレビ出演するつもりはありませんが、堅苦しい政策の討論番組だけではなく朝や日中の情報番組に出演することにも意味があると思っています。実際、情報番組に出演し始めてからは講演会に来る人の層も、学生などが増え様々になりましたし、街頭で見知らぬ方に声をかけられることも増えました。一般の人が動かないと世の中は動かないので、自分がポータルサイトとなって、人々に日本が抱える問題への関心を持ってもらえればと思っています。

――今後古賀さんはどのように活動なさっていくおつもりでしょうか
 今後については、政治家になるつもりはなくて、政治家を支援していきたいと思っています。「改革派」と呼ばれる政治家達に政策を提案し、党派を超えて同じ政策を持つ人を増やし、改革のための大連合、政界再編につなげていけたらいいなと思っています。現状の問題を国民に伝えるとともに国民の声を政治家に伝えるリエゾンの役割を果たすことによっていい政治家を育てていきたいと思います。

――社会で求められる「優秀さ」とはどんなことでしょうか
 「創造力」、「失敗を恐れない」の2点だと思います。
 まず「創造力」ですが、企画、運営どちらに関しても必要です。前代未聞の難問に立ち向かわねばならない日本において、前例にとらわれない新しい解決策を考える力が必要です。
 次に「失敗を恐れない」に関してですが、いかに自分でリスクを負えるか、ということです。例えば、白紙から考えて全く新しい提案をすると、「前例を踏襲しました」という今までの言い訳は通用せず、失敗は完全に自分のせいとなり、責任の所在が明確になります。それでも自分の案を主張しリスクを取れるかどうかが、これからの日本では試されます。

――今後の日本を担う東大生にメッセージを
 まず、肩書を抜きにして自分を見てほしいです。所属ではなく、自分はこういう人間だといえるような。東大生は能力を持っているのだから、自分を既存の社会の枠にはめないで、その枠を壊すような起爆剤になってほしいです。能力を持っているのだから、一流企業に就職し......といった安定を求める必要はありません。自信と誇りさえあればどうにか乗り越えていけます。いずれ日本経済には大混乱が訪れるでしょう。勝負はその時です。どうせなら好きなことをやっておいた方がいいですよ。
 また、外国人と協力できる人間になってほしいです。現在は日本だけの時代ではないです。お金と時間を惜しまず海外に行って経験を広げて、現地の人の友達を作った方がいいです。将来必ず財産になります。語学も少なくとも英語と中国語は勉強しておいた方がいいと思います。
 そして、正しいと思ったことを通してほしいです。どんな意見でも、筋が通っていれば聞いてはもらえます。自分の意見を伝えるときは、仲間を作りながらやるとよいです。特に自分より若い仲間からは、思わぬ意見をもらえることもありますし、何より仲間がいると楽しくなりますよ。